全力解説 vol.23「いま妊娠中のコロナ感染について分かっていること」

読者の方からご質問を頂きました。
🤰「妊娠中にコロナに感染しましたが、影響が出ないか不安です」
ここ最近、コロナの扱いは「インフルエンザの仲間」的な雰囲気になってきているのを感じます。
確かにワクチンが行き届いたことや治療法の確立もあり、流行初期に比べれば死亡率も改善してきました。
とはいえ、やっぱり新型コロナは新興感染症。
紀元前14世紀の記録から既に存在が示唆される天然痘、
紀元前6世紀頃に家畜に感染する近縁ウイルスから分岐したと推定される麻疹、
紀元前5世紀頃のヒポクラテスの記録に記されているインフルエンザなどと比べると、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世に出現してからわずか5年しか経っていません。

(新型コロナ/SARS-CoV-2ではないコロナウイルス科は遥か昔から存在しますが)
コロナに関して、感染した時の重症化リスクや治療法についてはそこそこ知見が溜まってきているものの、
感染時の長期的な予後などに関してはまだまだ分かってないことが多い状況です。
それだけに冒頭の質問文のようにコロナ感染に不安を抱かれる方は多いでしょうし、
それが妊婦さんとなると尚のことです。
てなわけで今日は「いま妊娠中のコロナ感染について分かってること」をお送りさせていただきます🐻❄️
「長くて読むの面倒くせえ」と思われた方のために結論だけ言っておきますと、毎年きっちりワクチンを接種し、人ごみ(電車など)ではマスクをし、食事の前や帰宅時に手洗いうがいをしとけばそれでいいです。
この記事はそれをアホみたいに長く書いてるだけであります🐻❄️

(なお「コロナワクチンは体に悪いものではないのか」みたいな100周遅れの議論はこの記事ではしません。ブログのコロナワクチン記事をご参照ください)
いまコロナ感染について分かってること(非妊娠時)
さて、妊娠中の話をする前に妊婦さん以外の話について。
まず最初に、コロナは未だにめちゃくちゃ怖い感染症です。
分かりやすいところで、2023年5月~2024年4月の12ヵ月間における国内のデータを見てみると、
コロナによる死者数は3万2576人、インフルエンザによる死者数は2244人となっています。
ワクチンがこれだけ普及してもなおインフルエンザの14.5倍も人命が失われる病気なわけですよ🐻❄️

しかも、この新型コロナの厄介なところに「風邪や肺炎の症状だけでは済まない」という性質がありまして、
当初は肺炎ばかりが取り沙汰されていた(というか実際、感染急性期の肺炎で亡くなる人が非常に多かったので長期的な後遺症の話をする余裕がなかった)わけですが、
新型コロナ、特にオミクロン株の流行以来は「Long COVID」と呼ばれる後遺症の存在がどんどん露わになってきており、
コロナが呼吸器系だけでなく脳・心臓・肝臓・腎臓・免疫システムなどあらゆる臓器にダメージを与えることが分かっています。
こんなもん、かからずに済むならそれに越したことはありません。
なお「オミクロンで弱毒化した」という風説がよく出てきますが、実際にはそんなことはなくただワクチンの流通により死亡率が低下したに過ぎず、
ほとんどがオミクロン株に置き換わった2023年以降でも、ワクチン未接種者や最初の2~3回以降ワクチンを接種していない人に関しては依然として重症肺炎や死亡に至る方が多く見られます。

そもそも新型コロナに関しては「死なないからOK」という説すら成り立っておらず、
アメリカの保険会社の発表でコロナのパンデミック後は現役世代(18~64歳)の死亡率が40%も高くなっていることが判明しています。
他の具体例としては、2024年4月に新宿の人気カレー店の店主がLong COVIDの影響で嗅覚・味覚が戻らず廃業したというニュースがありました。
他にも国内外のアスリートやアーティストに至るまで、Long COVIDの影響を受けた方は枚挙に暇がありません。
もちろん小児も例外なくLong COVIDを発症します。
2024年に国立国際医療研究センターが5~17歳の子ども1800人を対象に調査をしたところ、Long COVIDの発症頻度は6.3%、そのうち10.5%が「半年以上経過しても深刻な生活への支障がある」と回答しています。

要するに新型コロナウイルス感染症という病気の怖さは、
感染した直後(急性期)⇒重症肺炎で命に関わる
急性期を過ぎたあと⇒Long COVIDの可能性がある
という隙を生じぬ二段構えを体現しているところにあります。
若者だろうが高齢者だろうが、乳児であろうが妊娠中であろうが全員が等しくこれを食らう可能性があるわけです。
しかし、重症肺炎のみならずLong COVIDに関してもワクチン接種による予防効果が認められておりまして、
前述した小児のLong COVIDに関しては感染前に2回以上のワクチン接種をしているとLong COVIDの発症頻度も半減したことが確認されていますし、
2022~2023年時点の全年齢を対象とした研究も同様で、ワクチン2回接種を受けた人は1回以下の人に比べてLong COVIDの発症率がほぼ半減していることが示されています。
(参考:Atsuyuki Watanabe et al. "Protective effect of COVID-19 vaccination against long COVID syndrome: A systematic review and meta-analysis" Vaccine. 2023 Mar 10;41(11):1783-1790.
Hannah E Davis et al. "Long COVID: major findings, mechanisms and recommendations" Nat Rev Microbiol. 2023 Mar;21(3):133-146.)

というわけで以上をまとめると、
コロナはかからないに越したことはないので、そもそも感染しないのが一番。なので人ごみではマスクをし、食事の前や帰宅時に手洗いうがいをする。体調が悪い時はむやみに出歩かず、また体調の悪そうな人に近付かない。
とはいえどんなに気を付けていても感染する時はしてしまうので、そうなった時に重症化や後遺症をきたすリスクを減らすためにワクチンを毎年きっちり接種する。
「コロナ対策はどうすればいいか」という問いに答えるとすれば、マジでこれだけです🐻❄️
おとなもこどももおねーさんも全員これです。
インフルエンザにも全く同じことが言えます。
細かい数字とかパーセンテージとかは置いといて(私も全部丸暗記してるわけではない)、とりあえずこの結論部分だけ覚えといてください🐻❄️
免疫力を上げる健康法とか万病に効く食べ物とかそんなんどうでもいいし効きゃしないので(規則正しい生活で体調を整えるのは大事ね)、こういう当たり前のことを地道にやりましょう。
いまコロナ感染について分かってること(妊娠時)
コロナの基礎知識についてはこんな感じです。
続いて、妊婦さんがコロナに感染した時に起こり得ることについて、現時点で分かっていることをまとめてみましょう🐻❄️
といっても雑多に過去の報告をまとめるだけでは分かりづらいので、
「母体に与える影響」「妊娠転帰に与える影響」「赤ちゃんに与える影響」の3つに分類して解説していきます。
①母体に与える影響
まず最も大事なこととして、妊婦さんは(コロナ以外も含めて)呼吸器感染症の重症化リスクが高くなります。
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