全力解説 vol.56-3「妊活・妊娠サプリ徹底検証」その他編
第1回で「ビタミン編」、第2回で「ミネラル・ハーブ編」をお届けしてきた、
【妊活・妊娠サプリ徹底検証】シリーズですが、第3回となる今回は残り全て。
これまでの分類が当てはまらない雑多なサプリ(主に抗酸化作用・腸活)と、
ちょっと大きな声では言えない何かについて詳しく見ていきましょう。
第1回・第2回をご覧になっていない方はぜひそちらからどうぞ。
④その他
④-A:コエンザイムQ10
④-B:α-リポ酸
④-C:L-カルニチン
④-D:オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)
④-E:NAC(N-アセチルシステイン)
④-F:NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
④-G:GABA(γ-アミノ酪酸)
④-H:コラーゲン
④-I:グルコサミン
④-J:ラクトフェリン
④-K:プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)
⑤何か
⑤-A:プラセンタ
⑤-B:水素サプリ
⑤-C:ミトコンドリアを活性化させるっぽいサプリ
⑤-D:産み分けに使えるっぽい雰囲気のサプリ
ミトコンドリアについて
本題に入る前に、今回の記事において何度も出てくる「ミトコンドリア」について先に解説しておきましょう。
これをひとつ押さえておくだけで後の理解がだいぶ楽になります。
ミトコンドリアとは、我々の細胞のひとつひとつに入っている小器官です。
その役割を一言で言うならば「エネルギーを作ってくれる工場」ですね。
出典:羊土社 実験医学online
このミトコンドリア、元をたどれば我々とは別の生き物です。
普通に生きてて意識することは100%ありませんが、我々の細胞のひとつひとつには別の生き物が棲んでいます。それがミトコンドリアです。
そんなミトコンちゃんの起源は約18億年前にまで遡ります。
約46億年前に地球が誕生した頃、まだ酸素はほぼ存在せず、
大気の成分は窒素・二酸化炭素・メタン、そして水蒸気がほとんどでした。
そんな地球に原始的な生命が誕生したのは約38億年前のことであり、
それからしばらく、原始的な細菌や古細菌たちが海中をふよふよ漂うだけの時期が続きます。
この頃に存在した微生物のほとんどは酸素を使わない、むしろ酸素が毒にすらなり得る「嫌気性代謝」が基本です。
そんな中、約27億年前に「シアノバクテリア」という特異な細菌が誕生したことで潮目が変わります。
これらは太陽光を自分のエネルギーに換えることができ、その副産物として酸素を作り出したのです。今の植物がやっているのと同じ「酸素発生型光合成」です。
といっても当時の地球にとって、光をエネルギーに変換して酸素を出す細菌というのは、
現代に置き換えれば食べ物なしで永遠に生きられ、毒を生み出しながら自己増殖する化け物に近い存在です。
もはやシアノバクテリアの繁栄を止める術はなく、その後2~3億年かけて地球は酸素まみれになっていきました。
しかし、この状況を逆に利用して「じゃあ酸素をうまく使えばいいのでは?」という方向に進化した生き物もまた誕生しました。
それが「酸素を使ってエネルギーを発生させる代謝活動」、いわゆる「呼吸」をする生物です。
こうして、呼吸を高効率で行える生物(好気性代謝)が地球上で繁栄し始めます。
このように地球の生き物が呼吸をしたりしなかったりした約18億年前、
酸素呼吸を得意とする細菌(ミトコンドリアの祖先)を取り込んだ古細菌が生まれました。
これによって、呼吸によるエネルギー産生を別の細菌(ミトコンドリア)に任せ、自分自身は別の複雑な代謝活動を行う、という多大なメリットを得ることができたのです。
結果、現在の真核生物(ヒトを含めて目に見えるサイズの生物は全部これ)のほとんどの細胞にはミトコンドリアが存在することとなりました。
要するにミトコンドリアは、ヒトを含めたほとんどの生物が生きていく上で欠かせないものでありながら、現在までの生物の進化の礎となった存在でもあるのです。
そんなミトコンドリアが具体的に我々の細胞の中で何をしているのかを端的に言うと、
「糖や脂肪やアミノ酸を原料に、酸素を使ってエネルギーを生み出す」という仕事をしています。
疲れた時に糖分を補給して回復するのも、ひとえにミトコンちゃんがエネルギーを作ってくれているおかげです。
ミトコンちゃん無しに人類は指一本すら動かせません。
しかしさすがのミトコンちゃんといえど、エネルギーの材料(糖・脂肪・アミノ酸・酸素)だけで生きていけるわけでもありません。
詳しくは後で出てくるので名前や役割を覚える必要はありませんが、ざっくりこれくらいの物質が必要になります。
・アセチルCoA ⇒ 糖や脂肪の燃焼の開始地点
・カルニチン ⇒ 脂肪酸の移送
・コエンザイムQ10 ⇒ 電子の運搬
・NADHやFADH2 ⇒ 電子を渡すための電子供与体
・鉄や銅など ⇒ 電子伝達系の部品
・ビタミンB群、リポ酸など ⇒ 重要反応の補因子
・NAC ⇒ 抗酸化系
・オメガ3脂肪酸 ⇒ 膜タンパクの調整
これだけだと意味が分かりませんが、
ここでミトコンドリアを「火力発電所」に例えるとイメージしやすくなります。
・アセチルCoA ⇒ 発電所で燃やす燃料の搬入口
・カルニチン ⇒ 燃料を発電所に搬入する人
・コエンザイムQ10 ⇒ 燃料を発電所内で運ぶ人
・NADHやFADH2 ⇒ 燃料を炉に入れる人
・鉄や銅など ⇒ 発電機の金属パーツ
・ビタミンB群、リポ酸など ⇒ 発電機の整備工具
・NAC ⇒ 発電所の掃除道具
・オメガ3脂肪酸 ⇒ 発電所の外壁メンテナンス
燃料(糖や脂肪酸)と電子をゴチャゴチャにしてたりと正確性はあんまりですが、
それぞれの働きのイメージとしてはだいたいこんな感じです。
ここまでが「ミトコンドリアの機能」と「ミトコンドリアに必要な栄養素」の話ですが、
こんなん一発で覚えられるわけがないので、なんとなくの雰囲気が掴めればそれでOKです。
ではいよいよ満を持して、よくある妊活・妊娠系サプリメントの成分の役割を解説していきましょうか🐻❄️
④-A:コエンザイムQ10
おすすめ度:★☆☆(基本的におすすめしない)
健康食品系の成分でウンザリするほど名前を目にするけど実際これが何の役に立つのかと言われたらさっぱり分からないもの第一位。(やっきー調べ)
前述の通り、コエンザイムQ10はミトコンドリア内で電子の運び手となってくれており、
火力発電所で燃料をあっちこっちに運んでくれている感じの存在です。(正確ではないです)
そんなコエンザイムQ10が不足するとどうなるか。
発電所内で燃料の運搬が滞るとそのへんがゴミだらけになってしまうことが想像できますが、
これと同じようにミトコンドリアにおける電子の伝達が滞ると周囲一帯が酸化ストレスに晒されるため、
結果としてコエンザイムQ10は抗酸化作用(超ざっくり言えば細胞の老化防止)として働きます。
よって、「卵子や精子の若さを保つ」的な感じでコエンザイムQ10が期待されるわけです。
…ただし、「若さ」と「体内のコエンザイムQ10」はそんな単純な比例関係にあるようなものではなく、
たとえば心筋内のコエンザイムQ10濃度は20歳頃がピークであるものの、
0~2歳と39~43歳で同じくらいです。
Coenzyme Q10 supplementation – In ageing and disease
臨床的にも「加齢に伴うコエンザイムQ10濃度低下」が問題になるのは80歳くらいの話であり、そのへんの年齢では抗酸化作用がぼちぼち期待されているものの、
妊娠を考えるような年齢でコエンザイムQ10が有用であるというコンセンサスはほぼ存在しません。
では、妊活・妊娠にフォーカスを当ててみるとどうなるのか。
こんな時に最も頼りになるのが、不妊治療の総本山ことESHRE(欧州生殖医学会)です。
2025年、卵巣刺激に関するガイドライン改訂にあたって「コエンザイムQ10はどうなん?」との声が寄せられたようですが、
ESHRE側の回答は「今回のガイドラインでは取り扱わない(not addressed)」の一言でした。
加えて、2023年のAdd-onsドラフト(既存の不妊治療に追加する治療法の検討)でも「抗酸化物質全般について、妊娠率アップの根拠が乏しいので推奨はしない」としています。
その他、コエンザイムQ10と妊娠の影響については症例報告レベルならポジティブな意見も存在するものの、
明確に「効果が期待できる」と言えるほどのコンセンサスは整っていません。
そもそも論として、コエンザイムQ10は基本的に体内合成で賄う物質なので食事で欠乏するタイプの栄養素ではありません。
コエンザイムQ10欠乏が問題になるケースは、稀な遺伝性疾患くらいです。
以上のことから「これといった害も無いけど効果も立証されてない」というのがコエンザイムQ10の評価になります。
おすすめ度は★☆☆(基本的におすすめしない)とします。
④-B:α-リポ酸
おすすめ度:★☆☆(基本的におすすめしない)
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