全力解説 vol.31「よくわかる!!!左利きのすべて」

左利きは天才?左利きは短命?どうして左利きになるのか?
産婦人科医やっきー 2025.04.01
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こんにちは!

産婦人科医やっきーです!

本日のテーマは読者の皆様からのアンケートで決定しました。

というわけで、本日お話しするのは「よくわかる!左利きのすべて」です🐻‍❄️

ちなみに私は純正の右利きですが、かつて右腕を骨折した時に左手だけで生活せざるを得なかった都合上、箸は左手でも多少扱えます。

この時の訓練がまさか後に、自分でご飯を食べながら子どもにご飯を食べさせるために活きることになるとは誰にも予想ができないのであった。

(妻からは「そこまでして同時に食わんでもええがな」と不評でした)

まあそれはさておき、「左利きは天才が多い」「左利きは器用」などといったプラスの俗説もあれば、

逆に「左利きはストレスにより短命になる」といったマイナスの俗説も存在します。

また、左利き(両利き)に憧れて左手を使える練習をしてみた黒歴史をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。私を含め。

というわけで「よくわかる!左利きのすべて」というタイトル通り、左利きに関する俗説にどこまで信憑性があるのか、医学的に分かっていることについて解説していきましょう🐻‍❄️

***

左利きの基礎知識

まずは左利きの基礎知識から。

「右利きが多く、左利きは少ない」という認識は世界で共通のものだと思いますが、

これはここ100年や200年で起きたものではなく、それこそ有史以前から「利き手は基本的に右」というのが一般的だったことが示唆されており、

古代の石像や壁画などに描かれている人物もほぼ例外なく右利きです。

例えばこちらの壁画↓は紀元前1292~1190年頃に描かれたものですが、農作業をする人は右手で鎌を持っていますね。

過去に行われた中で最も大規模な研究のひとつが「左利きの割合に男女差はあるのか?」というもので、なんと144件の研究のメタ解析によって計178万7629人の参加者を対象とした研究が行われました。

結果、男女のオッズ比は1.23(≒男性は女性より1.23倍左利きが多い)という統計的事実が導かれています。ビッチリ書かれた参考文献だけで7ページにわたる論文なので一見の価値あり。

というか「利き手はどちらか?」という調査は医学的調査の中でもメチャクチャ簡単な部類に入るため、基本的にサンプル数は大きくなりがちで、

1992年には「物を書くときとボールを投げる時の利き手の一致率」を調べるために117万7507人を対象とした調査が行われてたりします。

総括として、アメリカ国立医学図書館のウェブサイト「Medline Plus」によると、

利き手は世界全体として85~90%ほどが右利き、10~15%ほどが左利きであり、この割合は古今東西を通してそれほど大きな差異はないようです。  

***

左利きは短命なのか?

上述のように、利き手に関しては古くから一般人・科学者を巻き込んだ大きな関心事のひとつであったことが伺えますが、

そうなると必然的に「左利きは右利きと比べてどういう違いが起きるのか?」といった推測もいくつかなされます。

そんな中でも最も多い俗説のひとつが、「左利きは平均寿命が短い」というもの。

これを耳にしたことがある方は多いと思います。

この説を最初に主張したのは心理学者のコーレンで、1991年に「高齢の人ほど左利きが少ない」「統計によって左利きは平均寿命が9.1年短いことが判明!」という論文を発表しました。

「左利きは日常生活が不便」という言葉はよく耳にしますが、純正右利きマンの私にとって言葉では理解できても実感を伴うのは難しいところではあります。

しかし実際、自動改札やらハサミやらマウスやら、ファミレスでカレーとかスープとかを入れるのに使う先の尖ったお玉みたいなやつやら、日常生活で左利きが不便となる場面は枚挙に暇がありませんし、

「左利きはストレスに晒され続けるから寿命が短いのだ」と言われると説得力を感じずにはいられません。

この論文により、左利きの不便さが!「言葉」でなく「心」で理解できた!と言いたくなったマンモーニは少なくないでしょう。

ただ、この論文は利き手の調査方法や統計手法がまあまあガバガバだったため、その後あらゆる学者から猛ツッコミを受けることとなりました。

実質的にこの説に反論するために行われたっぽい研究もしばしばあり、

例を挙げると、悪性腫瘍や脳血管疾患・心血管疾患といった死亡につながりやすい病気の有病率を調査してみると利き手との相関関係が全くみられず、

他にもノルウェーでは若者世代で15%を占める左利き率が、80歳以上だと1.7%しか居なかったことから「左利きはほとんど80歳まで生き残れないのでは?」という結果になったと見せかけて、単に昔は右利きへの矯正がメチャクチャ行われてただけだったことも指摘されています。

総括として、「左利きは健康へのリスクが高い」ということを示すエビデンスは特にないのが現状ですね🐻‍❄️

***

左利きは天才が多いのか?

さてさて、左利きのお子様をお持ちの親御さんはこのへんから気になってくるのではないでしょうか🐻‍❄️

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続きは、5376文字あります。
  • 左利きは高収入なのか?
  • 利き手ってどうやって決まるの?
  • 利き手は矯正すべき?
  • まとめ

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