全力解説 vol.65「反ワクチンビジネスの歴史と現在をまとめてみた」

宋美玄先生が代表を務める医療メディア・crumiiへ不定期に寄稿をし始めてちょうど一年ほどが経ちます。
そんな中、『やっきー反ワクチン三部作』なる記事を執筆しました。(6月公開予定)
今回この記事を書くに至った経緯ですが、
先日、札幌で開催された産婦人科学会で宋先生・重見先生・crumii社長の4人で集まり、
カニクリームパスタを食べながら「次のcrumiiの記事、何にしようか?」と雑談をする中で『反ワクチン』というワードが出たことがきっかけでした。
考えてみれば、今まで「よくあるワクチンの反対意見はこのような根拠で否定されている」といった形で反ワクチンの言説に触れることはよくありましたが、
『反ワクチン』そのものにスポットを当てた記事は書いたことがなかったのです。
このことに気付いた瞬間、ムズムズと居ても立ってもいられない焦燥感に襲われたのは、
「新しい視点の記事が書けるぞ」と湧きあがる執筆意欲によるものだったのか、
はたまたシンプルなカニアレルギーだったのかは今となっては知る由もありませんが、
ともかく帰りの空港の待ち時間で、飛行機の中で、帰宅後の自室で延々キーボードを叩き続け、
リサーチ込みの3日間で10000字超の反ワクチン解説記事を書き上げた次第であります。
というか筆が乗って分量が膨らみすぎたので、crumiiでは三部作に分けさせていただきました。おかげで我ながら満足のいく出来になりました。
全体の4分の1がワクチン解説でできた本まで書いたというのに、ワクチンについて書けていないことはまだまだあった。
そんなわけで本記事は、crumiiに書いた反ワクチン記事の先行公開版ならびに有料版となります。
crumiiに寄稿した『やっきー反ワクチン三部作』の第一部・第二部を再構成しつつお送りしていきましょう🐻❄
天然痘にまつわる反ワクチン
反ワクチンの歴史を語る上で欠かせない存在が、ワクチン発明の原点となった「天然痘」です。
かつて猛威をふるいまくり、強力な感染性と高い死亡率で人類を恐怖のズンドコに陥れた感染症、それが天然痘です。
しかしこの天然痘、2026年現在の地球上には事実上、存在しない感染症となっています。ワクチンの普及によって自然感染が無くなり、1980年に根絶宣言が出されたためです。
そんな天然痘のワクチンを発見したのが、イギリスの医学者であるエドワード・ジェンナーでした。

ジェンナーは、ウシの感染症である牛痘(天然痘に似ているけど非常に軽い病気)に感染したことのある乳搾り娘は天然痘にかからない、という事実に目をつけました。
そこでジェンナーは、牛痘にかかった乳搾り娘の膿疱の中身を採取し、彼が雇っている庭師の息子・ジェームズ君に接種することで意図的に牛痘に感染させるという実験を行ったのです。
ジェームズ君は軽い発熱や倦怠感などの症状を起こしましたが、重篤な症状は起こさずに済み、そして天然痘の免疫を得られたことも確認できました。
すなわち、天然痘より遥かに症状の軽い牛痘で免疫を得られるので万々歳というわけです。めでたしめでたし。

かと思いきや、天然痘ワクチンの普及には凄まじい反発がありました。
そんな人類最初の反ワクチン活動の旗手となったのが、ウィリアム・ローリーやベンジャミン・モーズリーといった医師たちだったのです。
当時、ローリーは「牛の物質を人体に注射すると、頭から角が生え、足には蹄ができて牛のようになる」という扇動的なイラストを添えたパンフレットを作り、
モーズリーは「ワクチンを接種した女性は、雄牛と性交して半人半獣の赤ちゃんを産みたくなるだろう」と主張をするなど、
特に根拠なく、必要以上に不安を煽る方法でワクチンの危険性を訴え続けました。

Vaccinae vindicia; or, defence of vaccination
しかし、ローリーやモーズリーらが牛痘の有害性を訴えていたことには金銭的な事情があるのではないか、ということがWashington Postによって指摘されています。
というのも、この2人は当時、牛痘よりも古い予防法「人痘」を積極的に行っていた人物でもあったのです。
人痘は、天然痘の患者から膿を採取して感染させ、免疫を得るという手法です。ジェンナーの牛痘をヒトの天然痘に置き換えたような存在、と考えれば分かりやすいでしょう。

(ChatGPTで画像生成)
人痘は牛痘の発明以前から存在した手法であり、これはこれで天然痘に自然感染するよりは比較的安全に免疫を得ることができたのですが、それなりに危険を伴う手法には違いありませんでした。
具体的には、自然感染した天然痘の死亡率が当時の水準で1/7~1/8程度、人痘による死亡率は1/50程度だったとされています。(参考)
これに対し、ジェンナーの天然痘ワクチン(牛痘)は死亡率がほとんど0%に近いものだったため、もっぱら人痘でメシを食ってた当時の医師からすると生活の危機に直結しかねないものでした。
それでも大多数のマトモな医師たちは「より安全性の高い方を採用しよう」と牛痘に切り替えたわけですが、中には人痘にしがみついた医師もいました。その最たる人物がローリーとモーズリーだった、というわけです。(参考)
彼らは医学史における最初の「反ワクチン」にして、自己利益のために反ワクチンを盛んに訴えた「反ワクチンビジネス」の走りと呼ぶべき存在だったのかもしれません。

反ワクチンで儲ける仕組み
さて、古くはローリーやモーズリー、現代では数えきれないほど大量に、反ワクチンをビジネスにしてしまう不届き者が存在するわけですが、
彼らはいったいどうやって反ワクチンで儲けているのか?というカラクリの部分を実名を交えつつお届けしていきましょう。
(実名なしバージョンは後日公開のcrumii記事をご参照ください)
そして、その実例を踏まえつつ反ワクビジネス手法を掘り下げていくと、
その才能をもっと別のところに活かせよ!と思わされる事例ばかりでした。
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