全力解説 vol.76「医療者の服は誰が決めてるの?」

過去の名質問5選をピックアップ!
やっきー 2026.09.30
サポートメンバー限定

当ニュースレターでは、サポートメンバーの方々限定で質問にお答えする質問募集スレッドを1~2か月に1回ほどの頻度で開いております。

ここで送られてくるご質問はいずれも芯を食ったものだったり、深刻なお悩み相談だったり、「その発想は無かった」と感心させられるものだったりします。

その内容の濃さに私も気合いが入り、1000~2000字くらいかけて回答を書くこともよくあります。

そうした「名質問」の数もだいぶ溜まってきたので、本日はそれらをまとめつつ、

過去の回答に大幅な加筆修正をして一本の記事としてお届けしましょう。

今回ピックアップするご質問は以下の5つです。

(質問文を一部改変・抜粋しております)

不妊治療中です。着床期〜妊娠初期の銭湯や温泉は避けた方が良いのでしょうか?

質問者:ハルパカさん

ナース服にジェラートピケと書かれていて「キラキラ産院か?」と思いました。医療者の制服って誰が決めているんですか?

質問者:もちもちさん

生理痛軽減のためミレーナを検討中ですが、避妊インプラントはどうなのでしょうか?

質問者:たんたんさん

胎児の精密超音波検査は、いつどのタイミングで受けるべきですか?普通の妊婦健診の超音波との違いは何ですか?

質問者:るるさん

妊娠中のたんぱく質補充のためプロテインを飲みたいのですが、産院の先生からソイ(大豆)よりホエイ(乳清)をおすすめされました。おすすめのプロテインはありますか?

質問者:KKRさん

***

「不妊治療中です。着床期〜妊娠初期の銭湯や温泉は避けた方が良いのでしょうか?」

まず、「妊活中」や「妊娠中」だけを理由に銭湯や温泉を避けるべき根拠は基本的にありませんので、体調が問題なければ遠慮なく楽しんでいただいて問題ありません。

…のですが、2点ほど留意すべき事項があります。

まず1つ目。ちょっと前までは確かに「妊娠中は温泉禁忌」という制度が存在しました。

温泉法第18条第1項に『温泉の一般的禁忌症(浴用)』という条項があり、

ざっくり言うと「体調が悪い人は温泉に入らんときや」というルールがあるのですが、

かつてはこの「体調の悪い人」の例として以下が挙げられていました。

急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期)

要するに妊婦さん(妊娠初期と末期)は温泉に入らない方が良い、というのが法律レベルで決まってたわけです。

「えっ私は妊娠中に温泉入ってたけど?」「母が入ってたらしいけど?」といった方もいらっしゃると思いますが、この法律の運用はこんな感じです。↓

国「この状態の人は温泉の禁忌として扱うことにするで」

自治体「各温泉施設は禁忌をきちんと掲示するんやで」

温泉施設「決められた内容をちゃんと掲示するで」

利用者「それを見て、自分が入るかどうか判断するで」

よって、うっかり入っちゃったとしても利用者側に罰則は特にありません。

温泉施設が「禁忌症を掲示しなかった」なら30万円以下の罰金とかはありますが。

しかしこの制度、特に「妊娠中(とくに初期と末期) 」の部分が意味なくね?という声は当時からありました。

というのも、この「妊娠中は温泉をお勧めしない」の根拠となっていたもののひとつが1857年(!?)のフランスで行われた「子宮を温めたら収縮した」という動物実験であり、

それ以降、大した追試もなけりゃヒトで同じことが起きたことを示したエビデンスも無い、というなかなかに薄弱な根拠でした。

(Calliburcès P. “Recherches expérimentales sur l'influence du calorique sur les mouvements péristaltiques du tube digestif et sur les contractions de l'utérus” Comptes rendus de l’Académie des sciences. 1857;45:1095–1097.)

しかしまあ、直感の通りでもありますが、日本中に温泉やお風呂に入ってる妊婦さんなんて山ほどいてそのほとんどが何の問題もなく過ごしているので、

2014年に禁忌症の掲示基準が見直され「妊娠中(とくに初期と末期) 」の文言が削除され、

さらにその後も検証が行われ、2020年に「妊娠中に温泉入っても流早産・妊娠高血圧などの産科的トラブルは増えない」「むしろ減った」という結果が示されたのでありました。(参考)

めでたしめでたし。

***

そして2つ目の留意事項。

「妊活」そのものは入浴制限がありませんが、「不妊治療で採卵した」ならば話が違ってきます。

採卵というのは卵巣に針を刺して卵子を取り出す処置ですので、

・(鎮静した場合)ふらついて転倒するリスクがある

・感染や出血のリスクが否定できない

ということで、入浴禁止に確かなエビデンスがあるわけではありませんが、少なくとも採卵当日については基本あんまし推奨はされていません。採卵当日はシャワーくらいで済ませるのが無難です。

あとは、常識的な入浴なら気にするほどのこっちゃないですが、

「極端な高温」にまでなると普通に体によくないので、長時間のサウナや長湯は避け、水分もしっかり摂りましょう。

最近は少し涼しくなってきましたし、ちょいとした時に温泉に行ったりするのも気分転換に良いと思います。

妊娠中の長旅は基本非推奨ですが、1時間圏内くらいの場所ならまあ大抵は大丈夫でしょう。週数や妊娠経過にもよるのでできれば主治医に要相談で。

***

入院中、ナース服にジェラートピケと書かれていて「キラキラ産院か?」と思いました。医療者の制服って誰が決めているんですか?

このご質問、正直笑いました。その発想は無かったと。

しかし目の付け所が非常に良く、これまでに無かったタイプのご質問でしたので気合いを入れてお答えしましょう。

先に言っておきますと、ジェラピケ着ててもキラキラ産院とは限りませんのでご安心ください。念のため。

医療スタッフの服の決め方には、大きく分けて2つのパターンが存在します。

「制服」か「自分で決めてる」か、ですね。

そして、看護師さんを含むコメディカルの方々はわりと制服を着がち、医者は自分で決めがちです。

これは何も、医者が特別シャレオツだからとかそういうことではありません。

医者はそれぞれ「よく着る仕事着」みたいなのが何となーくあります。

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