全力解説 vol.73「結局ピルってどれがいいの?」
【おしらせ】
小児科医ふらいと先生より、小児発達と療育をテーマにした漫画『エスプレッソ・コーラ』のご献本をいただきました。

あまりにもすごい作品だったので、ご献本をいただいてから1か月、書いては消し、書いては消しを繰り返してようやく紹介記事を書き上げました。
漫画ブログの方で更新してますので、よろしければご覧くださいませ🐻❄️
それでは以下、いつもの全力解説です。

2026年9月現在、ピル関連の話題が大変ホットでアッチアチです。
ピルといえば、避妊・生理痛の軽減・出血量の減少・月経周期の安定化・PMSやPMDDの改善・ニキビの改善や悪化抑制・子宮内膜症の改善・卵巣癌の減少・子宮体癌の減少・大腸癌の減少などの効果をもつ、言わずと知れた神の薬ですね。
これはホントに合法なのか?と疑いたくなるレベルですが意外と合法の薬です。
(一世紀前にピルの開発に携わったサンガー女史は法に触れて何回かブチ込まれているのでこの冗談が微妙に冗談にならないのですが)
そんな低用量・超低用量ピルはしばらくの間、新薬が作られず、過去に出た薬のジェネリック品がちょこちょこ発売されるにとどまっていました。一番新しいやつでも2018年の『ジェミーナ』という状況でした。
ところが2024年12月、血栓症を起こしにくいタイプ(理屈上)のエストロゲンを配合した新しいピル『アリッサ』が発売開始となったことを皮切りに、
2025年6月にはエストロゲンを配合しない避妊用ピル『スリンダ』が発売開始となりました。
さらに2026年8月、ヤーズとヤーズフレックスのオーソライズドジェネリック(後述します)である『ドロエチ』と『ドロエチフレックス』がバイエル・久光製薬から発売開始、
2026年9月には国内初の第三世代超低用量ピル『マルシロン』が発売開始となりました。

6年近く新薬が出てなかったのに、直近の2年足らずで3剤(ジェネリックを含めると5剤)もの選択肢増。
これはもう、ピルの扱いを専門とする女性医学徒の端くれとしては盆と正月が一緒に来たような、
ハンターハンターとドリフターズとガラスの仮面の最新刊がいっぺんに出たような大騒ぎなのです。
というか私も女性医学を専門とする立場上、ピル関連の仕事が増えてます。ありがてえことでございます。
当レターでもピルの解説記事を以前に執筆しておりまして、わりと上位の閲覧数となっています。
こちらの記事にもドロエチフレックスやマルシロンに関する追記を行いましたし、
他のメディアでもこれらの新しいピルに関する解説は多く見受けられます。
ただ、おそらく現役ピルユーザーの方、あるいはこれからピルを検討中の方々はこうも思っているのではないでしょうか。
結局どれ選んだらええねん、と。

薬の選択肢が増えたことはいいことです。実際、一長一短があるので「これさえ選べば大丈夫」と言えるような薬はありません。
しかし選択肢が増えすぎると、今度は「何を選べばいいんだ」と混乱を起こすのが人間というもの。
俗に言う『選択のパラドックス』というやつです。
「晩ごはんのリクエストは?」と聞いて「何でもいい」と答えてきた奴にジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスホールドを仕掛けたくなるのも選択のパラドックスによるものですし、
逆に「遠足のおやつは300円以内」とか「そこに3匹のポケモンがいるじゃろう」など、最初から選択肢が狭められていた方が心理的負荷が軽くなるのも選択のパラドックスによるものです。
そういった諸々を踏まえて、今回は「結局ピルってどれがいいの?」をお届けします。
日に数人~場合によっちゃ数十人という単位でピルを処方している立場として、どうやって選ぶべきなのか、結局どれがおすすめなのかを、前回の記事では書き切れなかった部分まで含めてお伝えしましょう。

ピル選びの4つの評価軸
まずは前回のピル解説記事のおさらいから。
前回の記事では、ピル選択において「エストロゲンの用量による区分」「プロゲスチンの世代による区分」「相による区分」の3つの評価軸が存在することを解説してきました。
これを使って、目的別におすすめピルを考えてみよう…というのが前回の記事の趣旨です。

ですが、前回の記事はあくまでも無料の穏当版。
普段の私の診療だと、これら3つの評価軸を用いてさらにもう一歩踏み込んだ「どの薬を選ぶのか」の判断材料がありますし、
いろんな事情であんま声を大にして言いたくない、でも私自身が処方する時はゴリゴリに意識している「4つ目の評価軸」が存在します。
というわけでここからは、私が実臨床でマジでやっているピルの選び方を伝授しましょう。
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