全力解説 vol.12「マーガリンはプラスチック?体に悪い?」

本日のテーマは『マーガリンって体に悪いの?』です。
ここのところ、民間臍帯血バンクの話をしたり、男女の産み分けの話をしたり、質の低い医者の見分け方を考えたりとちょっとパンチの強い話題に偏っていたため、
今日は少し肩の力を抜いた話題にさせて頂きます。
さて、皆様はこんなコピペをご覧になったことはありますか?
(以下コピペ)
1880年 アメリカ 安くておいしい改良型のマーガリンが開発される
↓
乳製品業界「にせバター死ね!規制しろ!税金かけろ!」
農業「せ、せやな・・・よくないな・・・」
↓
政府「マーガリン1ポンドにつき2セントのマーガリン税を導入するわ」
政府「あとマーガリンの卸と小売を認可制とし、認可料が徴収するわ」
乳製品業界「ざまあ!」
お客さん「マーガリンください」
↓
政府「マーガリンはバターと同じ値段で売ること、安売りしちゃダメ」
乳製品業界「ざまあ!」
お客さん「マーガリンください」
↓
マーガリン屋「これからは国産(アメリカ産)の植物油を使うよ!油売って!」
綿花農家「ありがてえwww」
大豆農家「ありがてえwww」
↓
農業「マーガリンいいやつだったわ 誤解してたわ」
政府「酪農は大事だけど、もうマーガリン差別をやめざるをえないわ」
乳製品業界「・・・」
↓
医者「正直、バターは心臓ぶっ壊す毒です。マーガリンのほうがマシ。」
乳製品業界「・・・」
↓
医者「トランス脂肪酸っていうのもある」
乳製品業界「っしゃああああああああマーガリンは毒!マーガリンは毒!プラスチック!」
↓
マーガリン屋「製法変えてトランス脂肪酸減らしたよ」
お客さん「マーガリンください」
(以上コピペ)
このコピペは2013年1月22日に2ちゃんねるのVIPスレで投稿されたのが原典となっているようですが、
圧倒的な分かりやすさと面白さで、匿名掲示板界隈では未だにマーガリンの話題が出るたびこのコピペが貼られるほどの人気を誇っています。

しかし、「マーガリンはプラスチック」「体に悪い」といった話を聞いたことがある方も多いと思います。
これは果たして、どこまで本当なのでしょうか?
マーガリンの健康リスクは具体的にどうなっているのでしょうか?
健康系の話題は7割くらい間違ってる(そもそも引用本のチョイスがおかしい)ことで知られる中田敦彦さんの「YouTube大学」でも、
マーガリンやショートニングはだいたい悪者にされています。

出典:中田敦彦のYouTube大学【食べてはいけないもの②】健康のために食べるべきものとは?(Foods You Shouldn't Eat)
てなわけで本日はマーガリンが本当に悪者なのか、どのような健康リスクがあるのかを全力解説していきましょう🐻❄️
バターの歴史
当レターの読者様はだいたいお察しのことと思いますが、
『産婦人科医やっきーの全力解説』はとりあえず歴史から遡ります。
マーガリンについて解説する前に、マーガリンの大先輩にしてライバルでもある「バター」の歴史から振り返っていきましょう。
実際、バターは容器に入れた牛乳を振るだけでもできます。

出典:百姓貴族 7話
おそらく大昔は、牛乳を動物に乗せたりしてちょっと遠方に運ぶだけでも、その振動でバターはできてたものと思われます。
そのため、古代メソポタミア文明(少なくとも紀元前5世紀頃)では既に存在していたことがほぼ確定していますが、古すぎて正確な起源は分かっていません。
大昔の食品にありがちな「勝手に新しい食材ができてた」パターンのひとつですね。

しかしバターの扱いや用途は古代~中世にかけてヨーロッパの中でもかなりの地域差があり(寒冷な地域でないと保存が難しいことと、地中海地域ではオリーブオイルが普及していたため)、
今やバターを使いまくってるイメージのあるイタリアやフランスでも、14~15世紀くらいまではバターは食材としてほとんど定着していませんでした。
これらの地域では、バターは食材というより整髪料として体に塗ったり、美容液として顔や体に塗ったりしていたそうです。
べたべたになりそう🐻❄️
しかし、イタリア・フランスといった奥深い食文化を持つ地域でバターが料理に頻用され始めると、食材としての価値が徐々に高まります。
さらにバターの精製技術も向上し、塩を加えることで保存性を高める技術(有塩バター)も開発されたことで、
バターは食文化に欠かせない存在となっていきます。

マーガリンの誕生
そんなバターには、製造に手間がかかることと、鮮度が失われやすく保存性に難があるという問題があり、庶民はなかなか口にできない高級品として存在していたわけですが、
19世紀後半には冷蔵技術や輸送手段が発達したことで、ご家庭でも比較的お手頃な価格で手に入る食品となりました。
特にフランスにおけるバターの品質の高さは、この頃から評価されていました。
有名な高級バター「エシレバター」がフランス生まれであることからもお分かり頂けるでしょう。

そんな中、フランスとプロイセンとの間で勃発した普仏戦争の影響もあり、フランス国内で急激に物資が不足したのですが、
バターはこの物資不足と需要の高まりが重なってしまったことで、特に大打撃を受けました。
この事態に、あの有名なナポレオンの甥っ子ことナポレオン3世も頭を悩ませます。

「あかん…プロイセンとの戦争のせいでバターがあれへん…」

「このままやと軍の士気にも関わるし、何とかならんもんやろか?」

「かのナポレオン・ボナパルト様(ナポレオン1世)は、軍用食の保存技術を公募して『瓶詰め』の発明に至ったそうですよ。」

「ほんま?さすがボナおじ…ワイも真似したろ!」

「みんな!バターの代用品を作ってくれ!!一番ええのを発明した奴には賞金をやるで!!!」

「バターが無いと聞いてやってきました。この天才化学者メージュ・ムーリエにお任せあれ。」

「そんなわけで、牛脂と牛乳を混ぜて冷やし、固めてみました。どうですかこれ!」ドヤァ

「うーん…バター……っぽいかな………なんか食感がニチャニチャするけど…」

「他に大したもん持ってきたやつおらんし、お前が優勝でええわ」

「やったぜ。」

「さすが私だ…素晴らしいものを生み出してしまった…」

「この人造バター、脂肪の粒子が真珠のように光り輝いているぞ…」

「よし、ギリシャ語の『真珠』になぞらえて『margarine』(マーガリン)と名付けよう!!」

「なんや荒ぶっとるなあ…」

「確かに安いですが、おフランス料理に慣れ親しんだ我々にはちょっと合わないですね…」

「…せっかくマーガリンの発明に成功したのに、結局誰も使ってなくない?」

「天才の発明は認めてもらえないものなのか…」

「待ちたまえ、ムーリエ君」

「?誰ですかあなたは。」

「私はオランダの超天才起業家、アントン・ユルゲンスだ。」

「ネタバレするけど、のちにユニリーバの前身となる企業を創業する超すごい人として知られているよ。」

「マジで!?うちドメストめっちゃ使ってますよ!!!」

「そんなユルゲンスは考えた…君が作ったマーガリンにはビジネスチャンスを感じる。」

「というわけで、マーガリンの特許を買収させてくれたまえ。」

「売ります!!私のかわいいマーガリンちゃんを世界規模にしてください!!」
といった経緯で、フランスで生まれたマーガリンはオランダに持ち込まれ、
そこで様々な改良を経て少しずつ現在のマーガリンへと進化していくことになりました。
とりわけ大きかったのが、1902年にドイツで発明された手法で、
常温なら液体である植物由来の油(ヒマワリ油とか菜種油みたいなの)に水素を添加することにより、常温でも固形を保てる油を作り出す技術が発見されたことですね。
ちなみにこの「植物油に水素を添加する」ことによる化学変化を「plasticize」と呼びます。
「plasticize」を日本語で言うと「可塑化」(≒柔らかくする)と呼び、かなり無理のある直訳をすると「プラスチック化」となりますが、我々が想像するあのプラスチックとは全く意味が違います。
詳しくは後述します🐻❄️
アメリカでは1874年にマーガリンが導入されましたが、
こうした技術革新の後押しもあり、内戦後の大不況下だったアメリカでもさらなる発展を遂げ、
冒頭のコピペにもあるような酪農業界からの抵抗をメタクソに受けながらも生産量を着実に伸ばしていきました。
1960年代には動物性油脂であるバターの健康リスクの高さが指摘されたことで、
安くてバターよりも健康に良い、ということで植物性油脂であるマーガリンの人気がさらに高まりました。

ここまではマーガリンの天下だったのですが、次第に暗雲が立ち込めます。
1970年代頃から動物実験や疫学データ等から「トランス脂肪酸ってヤバいのでは?」という説が上がり始めたのです。
トランス脂肪酸のリスク
はい、ここでトランス脂肪酸について超簡単に説明しましょう。
なんかたまに聞くトランス脂肪酸とは一体何なのか。
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- 日本での対策は?
- マーガリン製造会社の改良
- 余談①:マーガリンを過剰に叩いていた人の正体
- 余談②:やっきー父の創作料理「マーガリンご飯」
- 余談③:ソーライス
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