全力解説 vol.50「胎動について世界一深く調べてみた」
先日、産婦人科医・太田先生(@syutoken_sanka)がXで胎動に関する啓発をして大きな反響を呼んでいました。
お産が近くなっても赤ちゃんが動かなくなることはありません。
急に動かなくなった場合には、赤ちゃんがものすごく具合が悪くなっている可能性があります。夜中でも良いので、産院に行きましょう。断る病院はありません!
この投稿には全面的に賛成で、個人的にも胎動に関する苦々しい経験はいくつもあります。
私よりずっとキャリアの長い太田先生なら尚更でしょう。
そして、確かに胎動はメチャクチャ大事です。私は毎回、妊婦健診のたびに胎動がどうなのか妊婦さんに確認しています。
超音波で赤ちゃんの動きを数分間ほど見続けることなども珍しくありません。
しかしこの『胎動』、医学的にはものすごく扱いの難しい概念でもあるのです。
何せ、よく使われる「胎動カウント(〇分間に△回の胎動があればOK的なやつ)」でさえ、
世界有数の信頼度をもつコクランレビュー(2015年)では「臨床に取り入れられるようなエビデンスは無い」と微妙な結論にとどまり、
さらに大規模なシステマティックレビュー(2020年)でも「胎動カウントをしても赤ちゃんの予後の改善は認められない」と言われたほどです。
ちなみに前者は約7万人規模、後者は約47万人規模のおそろしく巨大なデータを元に出された結論です。
では胎動についてどう考えればよいのか、
結論としては太田先生の投稿と同じく「なんかいつもより胎動が少ない・弱いと思ったらとりあえず相談してほしい」の一言に集約され、それ以上言うことは無いっちゃ無いのですが、
この結論に至るまでに、どのように知見が変遷してきたのか?
医学史上、胎動の研究はどのように行われてきたのか?
という部分に焦点を当て、『胎動』というものを深く掘ってみましょう。
そして、たぶんこの記事が胎動について世界で一番詳しく書いた記事になります。
ことは『胎動』という根源的かつ重大なテーマなので、これでもかというほど調べ尽くしました。引いた論文の数は過去最多クラス。
その結果、「胎動のこと軽視してる最近の産婦人科医はマジで何も分かってないわ」と世界五大医学雑誌で大々的に愚痴をこぼした医者とか、
日本で最初に胎動の研究をした医者(※産婦人科医でも小児科医でもない)の話とかも出てきてなかなかカオスでした。やっぱり医学史は面白い。
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