全力解説 vol.70「マジで知ってほしい骨粗鬆症の話」
いつもの解説記事に入る前に、読者の皆様へご案内があります。
まず、7月28日に発生した令和8年熊本地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。今も不安な時間を過ごされている方々が、一日も早く落ち着いた生活を取り戻せることを願っています。
熊本県では、被災された方々を支援するための義援金を受け付けています。私も微力ながら、寄付をさせていただきました。
なお、今回のような災害時にはさまざまな団体やサービスが寄付を募集しますが、個人や民間の団体だと余計な手数料がかかってしまうケースもありますし、詳細な使途を追うことも難しくなります。
よって「被災された方へ確実に届けたい」という場合は、熊本県、被災自治体、日本赤十字社、共同募金会などを選ぶ方が寄付の配分経路が明確です。
以下、目的別におすすめの送付先を掲載しておきます。
・被災された方々へ義援金を届けたい場合
熊本県が公式に開設している義援金口座であり、現状最も確実な義援金の送付先です。私もこちらへ送金しました。
・日本赤十字社の災害救護活動全般を支援したい場合
こちらは日本赤十字社熊本県支部の活動資金を支援する窓口です。今回の地震専用義援金の受付が始まった場合、「受付中の国内災害義援金」や上記熊本県支部のサイトにて送金先が公開されると思われます。
・被災自治体の復旧や復興を支援したい場合
ふるさと納税(返礼品なし)の形で、当該自治体への寄付が可能です。被災者の方々への義援金というよりは自治体の復興資金になります。
・熊本県の産業を支援したい場合
熊本県へのふるさと納税(返礼品あり)をまとめた公式サイトです。被災者の方々への義援金としては遠回りですが、県産品などを返礼品として選ぶことで当該自治体の産業支援に役立ちます。
支援の方法は募金だけではありませんし、各自の生活が最優先です。その上で、無理のない範囲で支援や寄付をお考えの方は、こちらをご参考としていただけますと幸いです。
以上、ご案内でした。ここからいつもの全力解説です。

『骨粗鬆症(こつそしょうしょう)』という病気をご存知でしょうか。
スゲー言いにくいこととスゲー書きにくいことによりネタ方向ばかりで有名になりがちなこの病気ですが、「骨折しやすくなる病気である」という事実は意外と知名度が低かったりします。
ちなみに『骨粗鬆症』が言いにくいのは「つ(ts)」「そ(s)」「しょ(ɕ)」という、口内の似たような場所で音を作る子音が連続してて舌が忙しくなるのが原因です。「手術」が言いづらいのと一緒です。
余談の余談ですが、仕事で10年以上「手術」という言葉を使ってても「手術」は未だに言いにくいです。外科医が「手術」と言わずに「オペ」と呼ぶのはそのためです(断言)。
しかし前回の『ジエノゲストについて語る。超語る』の記事で軽く触れた通り、(特に女性は)骨密度について知っておくことは非常に重要ですし、
こんなふうに「存在を知っておくだけで人生全体に活きる医学知識」はなかなかありません。
このへん、「がん検診は何をどう受けるのが最適か」(受ければ受けるほど良いわけではなく、適切な項目を適切な時期に受けるべき)と似たところがあります。
骨粗鬆症検診はがん検診と同様、格安で受けられる割に得られるリターンは大きいです。
というわけで今回は、知っとくだけで人生で得をする『骨粗鬆症検診』についてお話ししましょう。
読者の皆様ご自身に直接関係なくとも、ご両親や祖父母には関係しうるのでぜひ読んでってください。両親の介護リスクってやつは子供の立場的にけっこう大事ぞ!🐻❄️
骨が折れると何がマズいのか
読者の皆様の中に、骨折したことがある方はいらっしゃるでしょうか。
ちなみに私はあります。以前、利き腕を折った時は仕事になりませんでしたし、日常生活も不便でした。あと死ぬかと思うくらい痛かったです。長男だから我慢できた。
イギリスで行われた大規模調査によると、骨折したことがある人の割合は38.2%にのぼると推計されています。
すなわち、現在このニュースレターの登録者数が35,000人ちょいなので、全登録者のうち13,000人くらいは骨折したことがある計算になります。
だからどうということはありませんが。
とはいえ、小児や若い年齢での四肢骨折ならば(ものによりますが)痛かったり次男だったら我慢できなかったり位で済むことがあるとしても、
「骨折の負担」は年齢を重ねるごとに確実に響いてきます。
骨粗鬆症というのは全身の骨に影響の出る疾患ではありますが、
特に重要なのが大腿骨近位部(脚の付け根)・椎体(背骨)・橈骨遠位端(親指側の手首のちょい手前)・上腕骨近位部(上腕の付け根)の4か所です。

みんなの介護『骨粗鬆症とは?治療薬や予防法を解説』をもとに改変
大腿骨近位部なんて骨折したら歩けやしないので日常生活への悪影響は甚大ですし、背骨は人間にとっての支柱そのもの。たまにとんでもなく腰の曲がったお年寄りがいますが、(全員がそうとは言いませんが)かなりの割合で椎体骨折の積み重ねが原因です。
橈骨遠位端を骨折したら手首が使えませんし、上腕骨近位部を骨折したら腕が上がりません。
というわけで骨粗鬆症は本当に深刻かつ重大にとらえるべき疾患なのです。
具体的なデータで見てみましょう。
50歳以上かつ骨粗鬆症と診断された1107人を対象とした日本の調査によると、
「骨折歴なし」「1回骨折」「2回以上骨折」で比較をしたところ、QOLや日常生活に如実な差がみられていますし、
特に1回骨折した人は(骨折以外の理由も含めた)医療費が1.9倍、
2回以上骨折した人は医療費が4.3倍になったという推計が出ています。
先ほど少し書きましたが、高齢者となると家族の負担も無視できません。
骨粗鬆症による骨折患者の介護をしている家族309人を対象にしたオンライン調査では、1日あたり平均4.6時間の無償介護や介護者のQOL低下が認められ、
欠勤や勤務中の能率低下などによる経済損失は1週間あたり約43,000円にのぼるという試算も行われています。
これに対し、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート製剤・アレンドロン酸はすべての骨折リスクを30%減少・大腿骨近位部骨折に限っては53%減少させたというデータがあったり、
同じく骨粗鬆症治療薬のデノスマブは椎体骨折を68%減少・大腿骨近位部骨折を40%減少させたなど、治療薬のデータもだいぶ確かなものが揃っています。
つまり、骨粗鬆症は本人にとっても介護する家族にとっても相当な負担を強いられる疾患であり、早期に発見・治療しておくことのメリットは非常に大きいと言えます。

私は女性ホルモンの取り扱いを専門としていますが、女性ホルモンその1「エストロゲン」には骨密度を維持する効果があり、女性ホルモンが低下する周閉経期以降は骨粗鬆症リスクが高まるため、この分野では骨粗鬆症の話もけっこう出ます。
そのため、日常診療では骨密度をめちゃくちゃ測り、骨粗鬆症薬もそれなりに使っております。今回の記事はそんな立場からの解説ということでお読みいただければ。
それではここから、そんな骨粗鬆症の対策方法についてお話ししていきましょう🐻❄
「ピルやジエノゲスト、その他の女性ホルモン治療をしている場合はどうすべきか?」についても解説しております。
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